ゼロの使い魔【魔を滅する転生者】

第17章:[無能王と雪風の姫](1/16)

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「えっと、つまりはどういう事かね?」

 ユートの父、サリュート・オガタ・シュヴァリエ・ド・オルニエールは息子が戦争から帰って来るなり、『妹です。という事で宜しくお願いします、父上』と宣言してきた為、可ー成ーり困惑をしていた。

 ユートの隣には美しいと表現が出来そうな、黒髪に黒瞳で雪の如く真っ白な肌の少女が立っている。

「正確には父母を亡くした遠戚の娘って事で、ユーキの義姉で僕の義妹という事にしてくれない?」

「いやいや。それ以前に、何処から浚って来たんだ? それに後ろにはエルフ……というには肉感的だが、それっぽい耳をした女の子と背の低い女の子が居たりするけど、その子達も妹にしろと?」

「違うね、間違っているよ父上。後ろに控える二人はまた別口なんだ。とはいえ先に白亜の方だよ。後は、浚って来てないからね?」

「ふむ、ハクアというのがその娘さんの名前か?」

「まあね、本名は緒方白亜というんだ」

「オガタ……だと?」

 オガタなどという名前を名乗る人間は少ない。

 というか、そんな日本人っぽいファミリーネームを持つのは、ユート達以外には居ないだろう。

「父上も母上も伝説の虚無については御存知の通り」

「うむ、それは聞いて知っておるからな」

「虚無の担い手は四の四という言葉が示してる通りで四の担い手、四の使い魔、四のルビー、四の魔導具で構成されます」

 担い手が四人、召喚される使い魔も四人、系統の名を冠する指輪が四個、始祖の名を冠する魔法の道具が四個存在している。

「四とは古より続く国家の数でもあり、虚無の担い手はそのトップの血族にのみ顕れます。つまり、トリステイン、アルビオン、ガリアの三王国の王家の血筋とロマリア皇国の初代教皇・フォルサテの血筋ですね」

 所謂、お復習(さらい)的な言葉にサリュートとユリアナが頷く。


「我がトリステイン王国にはルイズ。ロマリア皇国にはヴィットーリオ枢機卿。そしてガリア王国に無能王と名高いジョゼフ一世」

「ふむ、アルビオンの場合だとプリンス・オブ・モードと名高いモード大公を始めとして、ジュームズ一世陛下……否、ジュームズ様とウェールズ陛下以外には全滅しておるが、御二方は普通に系統魔法を扱える。ならばアルビオンの虚無の担い手は居らぬのか?」

「いえ、プリンス・オブ・モード大公の娘、言ってみればプリンセス・オブ・モードが生き残っておりますれば、アルビオンの虚無の担い手はその姫君です」

「な、何?」

「エルフのシャジャル殿との間に生まれた、ティファニア・ウェストウッド・オブ・モード。この娘です」

 ティファニアを前に出して白亜の隣に並べた。

「はい?」

 目を白黒させるティファニアは、ユートとサリュートを順繰りに見遣る。

「あ、あのあのっ! 私がウェールズ陛下の従妹なのは聞いていたけど、虚無の担い手って何んなの?」

 血縁に関してと母の生存までは聴かされていたが、虚無の担い手だというのは初耳であり、そもそもその単語自体を知らない。

 先程からのユート達の話し振りから、重要なものだとは理解しているが……

 というより、このお復習そのものがティファニアへの説明の一環である。

「ティファニア、君は最近になって使い魔の召喚を行った。そうだね?」

「う、うん」

「出て来たのは綾瀬夕映……彼女だった」

「そうだよ」

 チラリと夕映を見遣り、頷くティファニア。

「そして、人間を召喚出来るのは基本的に虚無の担い手だけなんだ。例えば……白亜はガリアの虚無の担い
手が喚んだ。それと同じく君は人間の綾瀬夕映を喚んだ訳で、それこそが何より確かな証左だろう」

「そうなんだぁ……」

 まあ、大した知識も無かったからだろうか? それで納得をしたらしい。

 話の流れから、何故だかティファニアの紹介をしてしまったのだが、ユートは再び白亜の話に戻す。

「兎に角、白亜はガリアのジョゼフ王に召喚されて、アルビオン戦役を起こしたミョズニトニルンだったんだけど一度、生命を喪った事で契約は破棄。行く場所も無くなったから、白亜を還す算段が付くまではウチに置きたい。取り敢えず、僕の義妹でユーキの義姉というのが妥当だろ?」

「そりゃ……なぁ。お前が次期オガタ家の当主だし、そのくらいはユート自身で決めても良いが……な」

「そ、ありがとう父上」

 因みに、ユートの父上呼びに違和感バリバリな白亜は首を傾げていた。

 前世では普通に父さん、母さんだったのだから。

「で、そちらの二人は? よもやアルビオンの王族を妹には出来まい?」

「この二人に関しては普通にアルビオンからの留学生として、トリステイン魔法学院に通わせます。夕映も魔法は使えるし、学院に入るのに問題無いでしょう」

 形式的には精霊魔法……此方では先住魔法と揶揄されるタイプだが、見た目に系統魔法と変わり無い為、誤魔化しは幾らでも利く。

「ああ、その前に……夕映はティファニアとの契約(キス)は済ませたか?」

「なっ! そ、そんな事はしてないです!」

 ティファニアと自分によるキスシーンを想像し──但し、肝心な部分は描写されてない──夕映は真っ赤になって答えた。

「そう、それは良かった。していたら夕映の心臓を止めて契約破棄しなきゃならなかったからね」

「し、心臓を止めてって、何故ですか!?」

「使い魔との契約、コントラクト・サーヴァントをしてしまうと、使い魔が死ぬまで契約は続く。普通なら良いけど、ティファニアというかアルビオンの虚無の担い手が得るのは【リーヴスラシル】といって、悲劇の象徴っぽく詠われているからね。ルーンは胸に刻まれるけど、無いよね?」

「な、無いです……」

 流石に悲劇とか言われては戦慄してしまう。

 名を記す事すら憚れる、正直に云えば生命に関係をするくらいしか情報は無かったが、どうにも碌でもないルーンらしい。

 少なくとも、ジュリオがそんなルーンを得たくないと思う程度には……

 戦後、ユートはアルビオンはウェストウッド村に住む戦災孤児達をトリステインに集め、ド・オルニエールの都市に在る修道院へと預けており、ティファニアと綾瀬夕映は邸に連れて来た訳だが、いつまでも学院を休む訳にはいかないし、早々にティファニアと夕映の処遇を決めたい。

 勿論、白亜もだ。

 特に白亜はミョズニトニルンだった過去を持っている訳だから、ユートとしては早目に新しい立場へと落ち着かせておきたかった。

 やはり罪の意識くらいは有るだろうから。

 最終的にはサリュートもユリアナも、白亜を取り敢えず義娘として受け容れ、ティファニアと綾瀬夕映も暫くは家の方で預かる手筈となった。

 トリステイン魔法学院を卒業したら、ティファニアはアルビオンのモード大公の座を一時的にだが継ぎ、その子供が正式な家督継承を行う事になる。

 また、綾瀬夕映も学院に通う事が決定をしており、此方も学院を卒業したなら元の世界──地球へと還す予定だ。

 平賀才人がその時にどうしたいかは知らないけど、戦後のルイズとの仲を見る限り、原作の通りの選択をしそうな雰囲気だった。


「ああ、ユート」

「何? 父上」

「孫が生まれたら邸にいつでも連れて来い。シエスタの従姉妹である母親共々、見ておきたいしな」

「了解……」

 ジェシカの妊娠は報せてあるが、割と初孫を楽しみにしてくれているらしく、ちょっと安心をする。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ユートの仕事は多岐に亘るが故に暇な時も有るには有るが、やはり忙しい場合が多かったりする。

 今回、訪れたのは冒険者ギルドの建設予定地。

 冒険者ギルド──読んで字の如く冒険者を支援する為の同業組合だ。

 当然ながら冒険者なんてそんな職業、ハルケギニアには存在してはいない。

 ギルドにせよ商業ギルドと職人ギルドが、ユートの手で創られている程度。

 それまでは職人に関してはメイジしかなれない世界だったし、商業関連も商会がてんでんバラバラに存在していたくらい。

 ユートはド・オルニエールを中心に、紙漉きなどの仕事を初めとして少しずつ増やしていき、今では普通にギルドが存在している。

 商業ギルドもいくつかの商会を纏め、既得権益などもはっきりとさせながら、呼び掛けを行った。

 少なくとも、ド・オルニエールとド・フォート領内の店は、全てが商業ギルドに属している。

 勿論、ユートも慈善事業をしている訳ではないし、幾許かの利益はえているのだが、基本的にはきちんと還元をしていた。

 修道院に孤児を集めて、慈善事業もしているが……

 冒険者ギルドもある意味では慈善事業かも知れないのだが、ユートからしてみれば必要な措置だった。

 傭兵──それは基本的に食い詰めた平民が野盗などにならず、893的ではあれ一応は真っ当に生きている者や、貴族から平民になった貴族家の三男四男などや御落胤みたいな平民メイジなどがなり、戦争に参加をするか若しくは護衛などをするなどして稼ぐ存在。

 とはいえ所詮は893的な集まりであり、いつでも野盗化する危険性を孕んでいる者達でもある。

 それに一般平民も傭兵が幅を利かせるのを厭うし、存在そのものが困った連中というのが大方だ。

 そこでユートはトリステインでも最も力を持っている傭兵の集団を確保して、彼らを最初の旗印とする事により、他のトリステインの傭兵を集めて纏める。

 傭兵集団フェンリルは、最初こそユートの提案を渋りはしたが、三顧の礼も斯くやとしつこく頭を下げ、頭を張る男が一騎討ちにて勝てたらと条件を付けた。

 剣のみの一騎討ち、それにユートが勝利した結果、フェンリルを傘下に組み込む事に成功。

 其処から一気に勢力図を拡大していく。

 だが、アルビオン戦役も終了してしまい、傭兵という存在が必要とされなくなる事を、二代目の頭は危惧を懐いていた。

 そんな彼の危惧を知り、ユートが冒険者ギルド構想を伝え、アルビオン戦役後にトリステインの傭兵団体は冒険者と名を変え、新たに規則を作って再出発する旨を教えている。

 元々、ハルケギニアとは違う大陸から流れてきたらしくて、【フェンリル】の初代頭目のガイルはずっと前に死んで、二代目であるファイゼルが現在は取り纏めていた。

 正確には【フェンリル】自体が嘗て、別の大陸でのとある戦争の解放戦線で、それが終わってハルケギニアに流れる際に、解放戦線のメンバーも含めてその名を名乗る事になった様だ。

「もうすぐ冒険者ギルドも完成するな。メイジに頼らない建設も可成り板に付いてきたか……」

 メイジが魔法で建築物を建てるのは普通だったが、平民の家は技術が低いながらも大工が建てていた。

 日曜大工程度の知識ではあるが、ユートが技術を伝えたが故に今は未しもマシになっている。

「よ、ユート!」

 ファイゼルが現れた。

「何か、モンスター呼ばわりされた気がするが……」

「お前は何を言っているんだよ?」

 変な電波を受信したらしいファイゼルに、ユートは呆れながら言う。

「う〜ん。まあ、良いか。冒険者ギルドが完成したら俺達も冒険者だな」

「ああ、ファイゼルが傭兵を纏めてくれていたから、可成り楽だったよ」

「俺はガイルの親父の後を継いだだけさ」

「そういえばファイゼル、ラピスとはいつ結婚を?」

「ああ、あれな。何故かは知らんがお前に戦役中には話すなって言われて自重はしていたが、ギルド発足の後を考えてる」

「そうか、ならそのくらいに結婚祝いでも用意しておくかな?」

 戦役中には話すな……というのは、『俺、戦争が終わったら結婚するんだ』などと言わせない為だ。

 それは彼にとって明らかな死亡フラグだし。

 ファイゼルが率いる傭兵団もアルビオン戦役に参戦をして、少なくともフェンリルは全員が生き残っているのを確認済み。

 当然、彼らには安くない報酬を支払っている。

 まあ、それはアルビオンの裏切り貴族の財産から出されている訳だが……

 傭兵は雇い主から報酬を支払われてそれで暮らしており、冒険者もそこら辺は傭兵と全く変わらない。

 違いは戦闘ばかりが仕事ではなくなり、戦争が無い間にユートがやらせていた事が主となる。

 水メイジが欲するであろう秘薬捜し、畑仕事や放牧の管理なども行うし、人間に仇為すオーク鬼やトロル鬼やオーガーなどの退治も仕事となるだろう。

 これまではユートが仕事を工面して報酬を支払ってきたのだが、平民や貴族は傭兵というか冒険者に仕事を依頼する意味を見出だしてきて、もう放っておいても仕事は来る筈だ。

 冒険者ギルドスタートの仕込みは、既にユートによって済んでいるのである。

「当面は僕がギルド運営をしていくけど、いずれ君らが直接的に運営をする事になるんだし、色々と覚えていって貰うから。ラピスはそこら辺が優秀で助かっているよ」

「判っているさ」

 ファイゼルは黒を好み、ユートとはそういう意味で話が合った。

 それが故に仲良くなり、ラピスやテルルやチャイ=カ達、【フェンリル】とも次第に打ち解けていく。


 ラピスはファイゼルの幼馴染みであり、八年くらい離ればなれになっていたらしいが、今では婚約者という関係になっていた。

 長い亜麻色の髪の毛に、清楚な雰囲気の白と水色を基調とした服を身に付け、特技はフルートだと云う。

 テルルは見た目は子供で頭脳も子供っぽいのだが、実年齢は二六歳だ。

 巨大な雀、ミグカリバーに跨がって闘う唯一人の、雀騎士とも云うべき少女? である。

 チャイ=カは緑の髪の毛に眼鏡を掛けたメイドで、ドジっ娘メイドに含蓄の無いファイゼルの嘗ての雇い主から報酬として払い下げられたと聞く。

 因みにその嘗ての雇い主はファイゼルを、解放軍を裏切った為に最終的には殺された。

 尤も、殺したのは嘗ての雇い主の兄弟だったが……

 いずれにせよ、ソイツはファイゼルが殺しただろうから、生きる目は既に無かったとも云える。

『傭兵は如何なる理由があろうとも雇い主を裏切ってはならない、若しそれが許されるとすれば雇い主自身が裏切った場合のみ』

 つまりはそういう事だ。

 ユートが妙に裏切り貴族への弾劾が激しい訳だが、ファイゼルとの行動により【傭兵の流儀】に染まったのが原因である。

 とはいっても、裏切者なぞ碌なもんじゃないのだ、弾劾は普通だろう。

 ファイゼルの仲間は他にも当然ながら居るのだが、今の処は特に関係も無いから良いだろう。

「それじゃ、ファイゼル。ラピスやテルルに宜しく言っておいてくれ。君ら傭兵団には世話になったしね」

「ふっ、それは此方も同じ事だし気にするな。こいつ……お前から貰った【氷狼】は気に入ったし」

 腰に佩く片手剣の鞘を、ポンポンと叩きながら笑うファイゼル。

「そいつは重畳。ラピスに渡した【海魔女】やテルルの【偽・騎英の手綱】も、どうやら役に立ったらしいからね」

 【海魔女(セイレーン)】はフルート、【偽・騎英の手綱(ベルレフォーン・レプリカ)】は読んで字の如くミグカリバーに装着する手綱である。

「じゃあね」

「応、今度は何だ。ラピスとの結婚式で会おうぜ」

 照れるファイゼルに苦笑で返す。

 尚、冒険者ギルド本部が完成したのはその半年後の事だったと云う。


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