ゼロの使い魔【魔を滅する転生者】

第12章:[トリステイン魔法学院へ](1/42)

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 帰ってきた。

 還ってきた。

 緒方優斗は、二つの世界を経験してハルケギニアへと帰還したのだ。

 【機神咆哮デモンベイン】の世界では、大十字九郎とアル・アジフとの友誼を結んで、覇道財閥の総帥たる覇道瑠璃と契りを結び、大導師マスターテリオンと魔導書・ナコト写本の精霊エセルドレーダに共感し、六五〇〇〇万年前の地球へと楔を穿って、様々な力と知識を獲た。

 【聖闘士星矢】の世界に於いては、アテナより正式に聖闘士の称号……麒麟星座(カメロパルダリス)を与えられ、紛い物の【聖衣】も正式な青銅聖衣として造り変えられて認められる。

 更に聖衣の配合も判ったし小宇宙も体得し、双子座の黄金聖衣も空いてた場合は使って双子座を名乗って良い事となった。

 数多くの得難いものを得る事に成功し、本来の目的であったカトレアの治療にも成功。

 過程こそは苛烈で苛酷なものであったが、終わってみれば善き想い出となる。

 とはいえど、喉元過ぎて熱さを忘れる程にユートも間抜けではない。

 これまで以上に鍛練を自らに課し、仲間達も鍛えていかねばならないのだ。

 当然、獲た知識を充分過ぎるくらいに活用する心算でもある。

 先ずは【聖衣】を改良し紛い物を本物に近付ける。

 当然ながら機械天使たるメタトロンとサンダルフォンと量産型のドミニオン、これらも本物を見て得る事が出来た知識から改良する必要があった。

 どうせなら【スレイヤーズ】の世界にも行けたらな……などと、不謹慎な事を思える程度に余裕も出来、ユートは次々プランを実行する。

 内政にも力を入れて税収は鰻登りとなっていた。

 瑠璃やウィンフィールドから帝王学や経済学、果ては治世学というものを習った甲斐がある。

 そんなある日の事……

 王都から使者が来た。

 役目はユートに召喚状を渡す事にある。

 ユートは王宮への召喚状を受け取った。

 差出人は、ヴァリエール公爵と国王陛下の連名で、これは流石に断れるものではない。

 已むを得ず召喚に応じる旨を使者に伝え、王宮に上がる準備を行う。

「兄貴、使者は何だって? 難しい顔だけどさ」

「ピエール様と陛下の連名で召喚状を送って来たよ」

「召喚状? 兄貴、何かしたっけ?」

「最近やった事と言えば、カトレア嬢を治療する為に地球に行ったくらいだね」

 そもそもあれから大して時間も経っていないのに、大それた事を立て続けに出来る訳もない。

「まあ、行ってみるよ」

「じゃあ、みんなには訓練メニューを熟す様に言っておくね」

「ん、頼んだよユーキ」

 満足そうに頷くとユートは準備をし、トリスタニアへ向かった。

 トリスタニアはド・オルニエールから見て、西側に存在している。

 元々、前領主がサリュートに領地を譲らなければ王領になっていただけあり、トリスタニアからそれ程は離れていない。

 況してやド・オルニエールの邸は何代か前の王が、愛人を住まわせていたという噂もある。

 往き来は魔法の鏡を使っていたのだろうが、離れ過ぎているといざという時に不便という事だ。

 馬車を走らせ、トリスタニアに着いたら宿を取り、ユートは王城へと上がる。

 謁見の間に通されユートは少し吃驚した。

 父親であるサリュートやヴァリエール公爵、グラモン元帥にモンモランシ伯爵といった知っている貴族を始めとして、顔も知らない貴族達までがズラリと勢揃いしているのだ。

 デップりとし小柄な躰付きで横柄な目をした貴族、彼が彼の有名な高等法院長だろう。

「(あ、ワルドも居る)」

 金髪ロン毛な髭面の男、それがあのワルド子爵だと直ぐに判った。

 顔を知っていた事も勿論あるが、その瞳がギラギラとして野心に満ちている。

 ユートは視線を素早く動かし、居並ぶ貴族達を観察しながら国王の前に立つ。

 謁見の距離まで進むと、エドワード国王に跪き挨拶をした。

「ド・オルニエール子爵、サリュートが一子。ユート・オガタ・シュヴァリエ・ド・オルニエール、召喚に従い参上致しました。
国王陛下に於かれましてはご尊顔を、拝謁の栄誉を賜り恐悦至極に存じます」

「うむ、よく来てくれた」

 普段なら砕けた態度で話すのだが、流石に公式の場ではお互いに儀礼を尽くさねばならない。

 そして此処から、摂政官を任されているヴァリエール公爵が進めていく。

「さて、勲爵士(シュヴァリエ)ユートよ」

「はっ」

「貴公を呼んだのは他でもない。先日、ユートが治療に尽力してくれた我が娘、カトレアの事だ」

 周囲の貴族がざわめく。

「聞いていない!」

「どういう事だ?」

「そんな莫迦な」

「こんな子供が?」

「有り得ん」

 聴こえるざわめきとは、その全てが否定的なモノばかりであった。

 当然でもある、カトレアの病は公爵の次女というだけあり、貴族の間では余りにも有名なのだ。

 その病はスクウェア級の水メイジが何人も挑戦し、悉く失敗してきた。

 そんな病新興の子爵家の子供風情が、治療したなど誰が信じられようか?

「ヴァリエール公爵、流石に些か冗談が過ぎるのではありませぬかな?」

「ほう? 高等法院長殿はワシが国王陛下の御前で、嘘偽りを申し上げている……と? そう仰有りたいのですかな」

 威圧感を籠めて睨む。

 リッシュモン高等法院長もこれには堪らず、後退りをしてしまった。

「そ、そうは申しませぬ。ですが閣下、どれ程の才が彼にあるかは存じ上げませぬが、カトレア殿の病を癒せる程の魔法が使えるのですかな? ならば見せて頂きたいのですよ」

 ユートは思う。

「(それを嘘偽りを言ってるのだ……って語ってるだろうに)」

 だがリッシュモンの言葉を受けて周囲の貴族達は、口々に肯定する。

 これ程まで莫迦が多いとは思わなかった。

 バカバカしいと思うが、実力を示す事で騒ぎが収まるなら、少し露出してみるのもアリかと考える。

 正直、余り目立ちたくは無かったが、ユートにだって多少の自尊心は在る。

 ガキっぽいとは思う。

 それでも此処まで否定されては、少しくらい力を見せ付けてやりたいと考えるのも不思議ではあるまい。

 とはいえ実力を見せてしまうメリットとデメリットを天秤に載せると、やはり面倒事を背負いたくはない気持ちが勝る。

「(ま、僕が彼是と考えた処で決めるのは国王陛下とピエール様……か)」

 ならばその決定に従うまでだった。

 どうせラ・ロッタ男爵やグラモン元帥やモンモランシ伯爵にはバレているし、後はどの様に持っていくかが肝要であろう。

「(問題は、原作に入った頃に敵対する可能性のある連中にまで、僕の実力が伝わってしまう事かな)」

 それが一番のデメリットだった。

 特に既に子爵の位を継いでいるジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドにバレるのは、余り美味しくない事態だと云える。

 ワルドが未だ爵位を継いでいなければ、この場に居なかっただろうが……

 尤も実力を出し切る必要も無いから、少しだけ見せておけばエドワード国王やヴァリエール公爵であれば兎も角として、その周りは満足する筈だと考えた。

「ならば、ワルド子爵」

「はっ!」

「名高き魔法衛士隊の隊長たる君に、彼の実力の検分を頼もうか」

「御意に御座います」

「(おいぃぃぃっ! よりによってワルドか?)」

 カリーヌ夫人の部下だった現・マンティコア隊長、ド・ザッセールでも別に良いだろうに真逆のワルド。

 ヴァリエール公爵からしたなら、実力的に信頼出来るのもそうだが、家族ぐるみの付き合いがあるワルドに任せるのは決して不自然な流れではない。

 ユートは嘆息した。

「では、ユート・ド・オルニエールとワルド子爵による模擬決闘を執り行う」

 面倒臭い事になったと思いつつ、簡易決闘場となった謁見の間の中央に立つ。

「我が名は、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド……国王陛下の騎士隊が一つ、グリフォン隊の副隊長。二つ名は【閃光】。【閃光】のワルドだ!」

 騎士の名乗りという奴だろうが、ユートは嘆息すると返礼をした。

「僕は、ユート・オガタ・シュヴァリエ・ド・オルニエール。【烈風】より与えられた二つ名は【解除】。【解除】のユート!」

 全員が唖然となる。

 二重の意味で。

 元・マンティコア隊隊長【烈風】のカリンから直接二つ名を贈られた事実と、四系統とは全く関係の無い二つ名だという事に。

 向かい合う様にして髭面と対峙すると鬱になるが、気を取り直し擬態用の杖を手に自らの魔力を高める。

「始め!」

 介添人を務めるヴァリエール公爵自ら始まりを宣言して、ユートとワルド子爵の決闘が始まった。


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