ゼロの使い魔【魔を滅する転生者】

第9章:[世界に在りて](1/33)

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単身、ガリアへと向かったユートは先ず王宮に行く。

国王に会い、事の次第を伝える為に。

コッソリとやって何かしらの不測の事態が有ったら、当然ながら拙い事になるからだ。

「お久し振りです陛下」

ガリア王国の王都リュティスに在る王城、ヴェルサルテイル宮殿。

その主城、グラントロワの謁見の間で頭を下げて挨拶をするユート。

「久しいな、ユート殿」

ロマリアでの一件もあり、ガリア王はユートに一目置いていた。

だからか、王の表情は何処か愉しそうだ。

老王は数年前に謁見した時と比べ、痩せ細っている。

後3年の命だと言われれば成る程、納得出来た。

前情報で、シャルル・ド・オルレアンは四十代。

今のユーキ……というか、ジョゼットとシャルロットが9歳と考えると、結婚が貴族としては割と遅かったのだろう。

ジョゼフもシャルルも。

だとすれば、目の前の老王も同じくらいに結婚したのだとするならば、シャルルとジョゼフの四十年を引いても七十代。

よくて六十代という事。

確かに病という事も有ったのだろうが、恐らくはもう寿命なのだろう。

そこに病がきて急激に衰えてしまった。

病床での老人の急死なんてそんなものだ。

「(仮に陛下に薬を飲ませても、寿命ではどうにもならないか)」

病に罹らずとも、一年も経たない内に亡くなる筈。

どちらにせよ、薬を与える訳にはいかないからどうでも良いのだが……

他国の王に薬を与える等、それは国際問題の種にしかならない。

飲ませて治れば典医の面子を潰すし、無断で与える訳にもいかないだろう。

だからユートに出来る事なんて、死ぬと判っていながらも見過ごす事だけ。

ジョゼットの事もあるし、ガリア王には長生きはして貰いたいのだが真逆、一時の感情で自身のガリアでの立場を悪くは出来ない。

大局を見据えれば、下手に国の問題に首は突っ込めないのだから。

互いに挨拶も終わり、本題に入る。

「して、今日の訪問は何用かな? トリステイン国王からは、便宜を図って欲しいとあったのだが……」

「陛下はエギンハイム村をご存知ですね?」

「うむ、確かこのリュティスから馬で二日程の距離に有るアルデラ地方、ゲルマニアとの国境沿いを埋め尽くす【黒い森】の一角に、そんな村が在ったな」

人口が二百人程度の小さな村だが、戦争の度にガリアとゲルマニアを行ったり来たりする事になる村故か、ガリア王も覚えていた。

「その村の近くに、翼人が住んでいる事は?」

「それも知っておる。今はぶつかっておらぬが、近い将来は対立するやも知れぬ事もな」

どうやらガリア王は暗愚な人物ではないらしい。

まあ、そうだろう。

魔法の得意不得意、貴族との付き合い等で次王を決めずに、政治的な能力で決めたくらいだ。

ただ、それが後に血で血を洗った争乱と、骨肉の憎悪を家族間で巻き起こしてしまう訳だが……

それは決して、この老王の責任ではない。

それは兎も角、現在は翼人との対立も表面化していないが、いずれは問題が起きる事になる。

だからユートは言う。

「そうなる前に翼人を説得して、我が領に招致したいと思います」

「然し、それで良いのか? 問題をそちらに擦り付ける事になるが?」

「元ド・フォート領には、黒い森と同規模の森があります。その森にオーク鬼が住み着いていた事もあり、住民は居りません」

「其処を翼人に提供すると言うのか?」

「はい」

「何故、そんな事を?」

「邪神の話はしましたが、その戦いは人間だけで行えるものではありません」

ユートは自身の考えを話して理解を得んとする。

その戦いがどれ程に激しいものとなるのか、その為には他種族の力も必要である事、ロマリア皇国に対する政治的な攻撃も、他種族の力を借りるには必要な事だったのも併せて……だ。

それを聴いて、ガリア王は難しい顔になる。

「人間だけでは勝てぬか」

「実際、戦いは僕の造った武装をした者が中心となります。その穴を埋める事が出来るのは、初めから精霊との交感の高い、我々人間が【先住魔法】と呼んでいる力を持つ彼らのみです」

精霊との親和性は、彼らの方が高い。

それを考えれば、放っておくなんて選択肢は決して有り得なかった。

手段を選べる程の余裕も、全くと言って良いくらいに無いのだから。

「まあ、此方としては先送りになるだろう問題を解決して貰えるのだし、許可しない理由もあるまい」

「では?」

「うむ、翼人との戦争には発展させぬ事を条件とし、許可を与えよう」

「ありがとうございます、陛下!」

こうして、謁見は成功の内に終わる。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


グラントロワとプチトロワの間に有る庭で、青い髪に吊り目の少女が魔法の練習をしていた。

シャルロットはオルレアンだから、恐らくはイザベラだろう。

どうやら標的に【水の鞭】を揮って、ぶつけているらしい。

ドットとはいえ、水は質量もあるからあんな風に纏めて打てば、結構なダメージが通る。

杖の先から伸びる紐状の水が撓(しな)り、標的となった木の棒を叩き折った。

「威力からして、ラインになっているみたいだな」

ドットとラインが同じ魔法を放った場合、ランクが上のラインの方が威力の高い魔法となる。

精神力の消耗も、一気に半減するからドットとラインの間には、それなりに格差が生じるのだ。

「原作じゃあ、ドットすらまともに発動しなかったらしいから、可成り努力したんだろうな」

イザベラにはシャルロットの様な才能は無かったのかも知れないが、それで腐らずに努力を繰り返せば芽が出るだけの底力は、充分に在ったらしい。

「誰? って、貴方は!」

どうやら、普通に魔法が出来るからか磨れてはいない様だ。

喋り方が原作っぽくない。

「久しぶりって、言っても覚えてるのかな?」

「覚えてるよ、師匠」

「師匠?」

師匠なんて呼ばれるのは初めてで、少し吃驚した。

本当に魔法を教えていた、ルイズにさえ呼ばれた事が無かったというのに、僅か一日足らずの教授で師匠と呼ばれるとは、正直言って思わなかった。

それももう、数年前の話。

ユートの顔を覚えていた事さえ、既に奇跡に近い……と考えていたのだが、向こうはずっと覚えていた。

原作でのタバサへの仕打ちを度外視すれば、美少女と呼んでも差し支えないし、ずっと覚えていてくれたのは嬉しい。

たからまた、少しだけ躓いていると言っていた魔法のコツを教えてあげた。

純粋に水の魔法は使えるのだが、風を絡ませるとどうして使えなかったらしい。

自分の風系統の考え方や、風で水分を過冷却出来るという実践まで、目の前で見せてやる。

お陰で、拙いまでも氷槍の魔法【ジャベリン】を使える様になった。

その為、完全に師匠が定着してしまう。



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