ゼロの使い魔【魔を滅する転生者】

第6章:[白の国アルビオンへ](1/12)

.
 父、サリュートに売られたユートは、ムスッとした顔で邸に帰る。

 まあ、サリュートの立場も解るのだが、機嫌が悪くなるのは仕方ない。

 あの、あーぱー姫は原作で『わたしのおともだち、せんそうしてるあるびおんにいってちょうだいね♪』と言って、ルイズを裏切者と一緒に戦時中のアルビオンに向かわせたのだ。

 まあ、ワルドが裏切者なのは知らなかったから置いておくとしてだ、そもそも公爵家令嬢たるルイズを戦地に向かわせるなど仮令、王女とはいえ軽々しくやっても良い事では無い。

 それでルイズ達に何か有れば、洒落で済む問題ではなくなるからだ。

 原作では無事に戻って来たから、公爵に報せなくても済んだ。

 然し、万が一の事が有ればヴァリエール公爵はどう動くだろうか?

 莫迦な娘だと捨て置く?

 あり得ない。

 軍人でもなくて、爵位を継いでいるでもないただの学生であるルイズを、戦時中のアルビオンへ個人的な理由で送り込んだのだ。

 お友達だから……と。

 保護者である公爵には、何のお伺いも立てずに。

 確かに手紙の存在が知れたら、不利な交渉を強いられるだろうし、ゲルマニアはタルブ戦役でトリステインを見捨てているくらいな訳だから、場合によったら結婚も同盟も白紙となっただろうが、アンリエッタが通すべき筋を通さなかったのが問題なのだ。

 当然、全ての責任を負うべきなのはアンリエッタ。

 そもそもにして、戦争はごっこ遊びでなどでは無いのだから、軽々しく使者を送るべきではないし、況してや摂政にすら内緒にして送るなど言語道断であり、元はと言えば自身の立場を弁えず、恋文など軽々しくを送る事からして間違っているのだから。

 権力者とは、権利を有する代わりに義務が生じる。

 それを弁えないならば、彼女が信に置けぬバカ貴族達と何も変わらない。

 己の権利ばかり主張し、義務から目を背けているのだから。

 御綺麗なドレスを着て、美味しいご飯を食べていられる代わりに、婚姻の自由が得られない。

 ただそれだけの事だ。

 第一に、アンリエッタは権利を主張出来るだけの何をしていただろうか?

 殆んど何もしていない。

 マザリーニに言われる侭にゲルマニアに行っていただろうが、公務などは基本的に彼が行っていたから、本当にそれだけの御飾り。

 王の決裁が必要な書類の一つ取ってみても、マザリーニが判を捺していた筈。

 ニート王妃が引き篭り、仕事をしなかったのだから仕方がないが、本来の彼の役割からは外れている。

 彼の、マザリーニ枢機卿の役割は飽く迄も王の相談役であり、政治そのものを司る者ではない。

 原作で王の死後、政治を司るかの如く動いていたのは偏に、王妃が引き篭っていた上にアンリエッタが幼くて、王の冠を頂くに足りなかったからだ。

 本来、トリステイン王国はマザリーニ枢機卿に対し最大限の謝意を表すべきだろう。

 本当ならロマリア本国に帰って、教皇にすらなれた筈の人物を縛り付け、亡国となるのを防いでくれていたのだから。

 だからこそユートは一つの計画を練っている。

 問題はマザリーニ枢機卿をどう説得するか。

 そして、如何にしてあの御花畑(アンリエッタ姫)をウェールズに押し付けてしまうかだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「兄貴ってさ、アンリエッタ王女が嫌いな訳?」

「何でだ?」

「だって、黙ってれば凄い美少女じゃん? 顔もそうだし、スタイルだってさ。いっその事、ハーレム要員にでもしたら?」

「だ〜か〜ら〜、僕は別にハーレムなんて目指している訳じゃ無いって!」

 邸へと戻った後、ユートとユーキはユートの部屋で雑談に興じていた。

 言っている事は御立派なのだが、既に二人の少女に目を向けている辺り、説得力が皆無だったりする。

 コンコン……

「シエスタです。御飲み物をお持ちしました」

「どうぞ」

 ノックの音が響き、その後に聴こえたのはシエスタの声、ユートは即座に入室を許可する。

「失礼致します」

 扉を開き、トレイを片手に入って来るシエスタ。

 トレイを置くとグラスにワインを注いだ。

「先日、故郷から送られてきたワインですよ。どうぞ御賞味下さい」

 注がれた鮮やかな紅色な液体が、グラスの中でゆらゆらと揺らめく。

 とはいえ、前世の記憶がある二人としては少し抵抗があるのか苦笑していた。

 タルブのワインは確かに美味しい、オルニエールのワインよりも出来が良さそうである。

「さて、取り敢えずデルフを研究しないとな」

「研究ですか?」

「ああ、研究が進んで上手くアイテムが完成したら、シエスタにも何かしら造って上げるよ」

「え?」

 予想外な話にシエスタは頬を朱に染めた。

 詳しく知らないのだが、ユートの造るマジックアイテムは可成りの高額で取り引きされるらしいと、曾祖父から聞いている。

 そんな代物をくれるというのだ、少しくらいは自惚れても良いのかな? と、そう思った。

「という訳でぇ、デルフの構造を全て洗いざらい調べてしまおうか?」

《ヒィィィィィィィッ! お〜か〜さ〜れ〜る〜!》

 余りに人聞きの悪い事を言ってくれるデルフリンガーだが、剣の身では逃げる事も叶わず柄を掴まれてしまいその侭、研究室として使っている部屋へと連れ込まれてしまった。

「……御主人様は随分と愉しそうでした」

「ま、ボクもそうだけど、一度目覚めてしまうとこうなるんだよね。所謂処の、マッドサイエンティストってヤツにさ」

 シエスタの呟きに応えるかの様に、ユーキは嘆息しながら言う。

 強度、材質、何故魔法を吸収出来るのか、何故魔法を吸収すると使い手を操れるのか、デルフリンガーの持つ意思はどう固定されているのか……

 知りたい事は幾らでも有るし、其処から技術を取得して流用出来るかどうかも調べたい。

 正に、デルフリンガーとはマジックアイテムの叡智の結晶だ。

 何しろ、本人の意思で見た目を錆びた様に見せる事も可能な訳だし。

「あ、そうそう。シエスタはお兄様を御主人様と呼んでるよね?」

「え、はい」

 そもそもシエスタを初めとしてユートが傍に囲っている同い年くらいのメイド達は、ユート自身が稼いだお金で雇っている。

 つまりサリュートでなくユートこそが主なのだ。

 シエスタがユートの事を『御主人様』と呼ぶのは、雇い主──そういった意味合いもあった。

「お兄様は、名前で呼んで欲しいと思ってるんじゃないかな?」

「え、でも……」

 突然の言葉に、シエスタは驚いてしまう。


.

- 64 -
前n[*][#]次n

/442 n

⇒しおり挿入


[←戻る]