ゼロの使い魔【魔を滅する転生者】

第1章:[ド・オルニエール家](1/12)

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「オギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 室内に赤ん坊の大きな泣き声が響いた。

 今、女性の胎内から赤ん坊が誕生し、元気な産声を上げたのだ。

 煩いなどと言うなかれ、赤ん坊は泣くのが仕事な訳だし、泣く以外に自己主張をする術が無いのだから。

 寧ろ、産声を上げなかったらその方が問題だろう、何故なら、赤ん坊の産声というのは元気に生まれた証なのだから。

 この、ド・オルニエール子爵領で今日という日は、最もめでたい日となる。

 サリュート・オガタ・シュヴァリエ・ド・オルニエール子爵と、ユリアナ・オガタ・ラ・アウローラ・ド・オルニエール子爵夫人との間に子供が生まれた。

 生まれ出でて最初の産声の元気さは、両親をとても安心させたものだ。

「よくやった、ユリアナ。元気な男の子だ!」

「ええ、アナタ。本当に無事に生まれてくれて良かったわ」

 生まれて間もない赤ん坊は肌の色も赤くて、永らく羊水に浸かっていたから、全身が皺くちゃだったが、サリュートにとっては可愛い子供である事には違いはない。

「本当によく頑張ってくれたなユリアナ。そして……生まれて来てくれてありがとう、我が息子よ!」

 この日、ド・オルニエール家最初の子供の誕生を、オルニエール領内挙げて喜んだのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 赤ん坊の誕生から一週間が経ち、赤ん坊は未だに坐らない首に四苦八苦しながら様子を眺めている。

 誕生して直ぐ、サリュートはまるで神(ブリミル)の啓示でも受けたかの様に、キラリと名前を閃いた。

 【ユート】

 この子は、この名前以外は有り得ないとまで考え、妻に相談した結果優しげに微笑んで賛成してくれる。

 赤ん坊の名前は、ユート・オガタ・ド・オルニエールと名付けられたのだ。

 ユートはベビーベッドの様な物に寝かされている。

「(困った……)」

 そう困った、本当に困ってしまう。

「(真逆、生まれて一週間程度で意識が覚醒するなんて、ぶっちゃけ有り得ないだろう?)」

 赤ん坊は既に、優斗としての意識を覚醒して、記憶も徐々に回復していた。

 一気に記憶が回復すると赤ん坊のキャパシティを越えてしまうから、安全措置なのだろう。

 それで何が困ったのかというと、先ず第一に退屈だと云う事。

 身体を碌に動かせないなんて、それは拷問以外の何ものでもない。

 人間とは、退屈を友には出来ない生き物なのだ。

 日がな一日、ただ寝て暮らす日々をユートは少なくとも二年は過ごさなければならない。

 第二に、食事だ。

 取り敢えず泣けば食事は摂れるが然し、生後一週間の赤ん坊の食事とは何か?

 言わずもがな、母乳だ。

 意識が覚醒してしまったからには、母親のオッパイにむしゃぶり付き、チューチューと吸う行為など羞恥プレイでしかない。

 この際だから、乳母だろうが実母だろうが同じ事、母親であるユリアナの容姿は窮めて銀に近い白髪で、瞳の色は翠、身長は中学生の女子程度の女性。

 別にまんまでは無いにしても、見た目が【.hack】に登場するアウラと似ている気がする。

 そんな人の胸をしゃぶる自分……凄く恥ずかしい。

「(そう言えば、母上の名前はユリアナ・オガタ・ラ・アウローラ・ド・オルニエールだったっけ?)」

 アウローラとアウラは同じ意味だ。

 母乳は出るが脹らみが申し訳程度、優斗の好きだった合法ロリな容姿ではあるのだが、母親では嬉しくも何とも無い。

 それに母乳を飲めと言われても、人肌に温まっている乳というのは少し気持ち悪かった。

 同じ飲むなら、ホットミルクかアイスミルクのどちらかにして欲しいものだ。

「(飲まなきゃ飢えるから仕方がないけど……)」

 そんな訳で、ユートは泣く泣く母乳を飲んでいる。

 恥ずかしいやら気持ち悪いやら、踏んだり蹴ったりでしかない。

 そして第三がトイレだ。

 碌に身体が動かせないのだから、漏らしたくなければ何とか事前にトイレに行かなければならない。


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