ゼロの使い魔【魔を滅する転生者】

第0章:[ゼロへの転生](1/3)

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 1人の青年が交通事故によって死んだ。

 赤信号にも拘わらず少女が突然、道路に飛び出してしまったのを見て、青年は車輌が奔る中を掻い潜って走った。

 それは不幸な偶然だったのだろうか、誰かが6歳か其処らの少女を殺害する為に押したとは思えないし、自殺するには余りに幼い。

 ともあれ、青年は少女を救うべく駆け出して、その結果として2人共トラックに撥ねられたのだ。

 青年は、薄れ逝く意識の中で生命なんてこんなものかと思った。徒然なる侭に生きて、適当な三流大学に通う詰まらない人生。

 趣味だけは沢山有った。

 物理や医療や農業など、生産的な雑学を知識として身に付けていたくらいに。

 ライトノベルやアニメが好きで、予算の赦す限りは買い漁る何処にでも居そうな没個性な青年。

 大学卒業後、適当に会社に入って家と会社の往復というルーチンワークをするのだろう人生。

 将来の展望は無く、夢も無い絶望的な未来。それが途中で終わっただけの事。

 せめて最後くらいは格好良く決めたかったが、本当に侭ならないものだ。

 来世があるならもう少しマシな人生が欲しいなと、青年は切にそう思う。

 死の際に走馬灯も順当に観て、後は消え去るのみ。

 青年は真っ暗闇の中で、ふと呟いた。

「あ〜、終わったんだな。父さんも母さんもゴメン。先に死ぬなんて親不孝だとは思うよ。白亜もゴメン、お兄ちゃん入学祝いを上げられなくなったよ」

 この期に及んで出たのは遺された家族への謝罪。

 青年……緒方優斗は家族思いの優しい男だった。

 緒方優斗の家族構成は、両親と高校生に上がったばかりの妹と祖父母の6人。

 緒方優介(69)

 緒方節子(68)

 緒方優也(47)

 緒方蓉子(45)

 緒方白亜(15)

 緒方優斗(20)

 年下の妹の白亜は所謂、お兄ちゃんっ子で兄の優斗にとても懐いていた。

 とはいえ、自身より才能が豊かな妹にどう接して良いのか判らず、割と御座なりな対応も多かったが。

「父さん、母さん、白亜、じいちゃん、ばあちゃん、俺が死んだって判ったら悲しむのかな?」

 家族仲は決して冷えていなかった為、やはり泣かれるだろうなと思うと少し涙が零れてしまう。

 だけどもう優斗に出来る事は何も無いく、それだけが生の世界への心残りだ。

『ふーん、君は本当に家族思いなんだね』

「え?」

 突然、暗闇の向こうから声が響いてきた。真っ白な光が辺りを包み、優斗は自らの霊体の輪郭を得る。

 純白なる煌めきの中に、桜色(チェリーブロッサム)の如く輝きを放つ女性が、優斗の傍に立っていた……というか、浮いていた。

「…………は?」

 女性を見た優斗は、余りにも有り得ない存在を前に間抜けた声を出す。

 栗色の長い髪の毛を左側へサイドポニーに結って、瞳は紫水晶の様な美しい色をしている。

 純白を基調とした服装にロングスカート、袖が蒼い金属で出来ていた。

 胸元の黒から、アンダースーツは黒なのだろう。

 純白の服は、蒼いラインのアクセントが映えた。

 優斗はゴシゴシと指で目を擦り、再び女性を凝視したがやはり変わらない。

『? どうしたのかな?』

 声は明らかにゆかりん。

 しかも左手に、レイジングハートらしき杖槍を持っている。左利きの筈だし、間違ってはないのだろうが何処からどう見ても、その女性は魔王様だった。

『今、何か不穏当な事を考えなかった?』

 ブンブンブンッ!

 優斗は首をこれでもかと言わんばかりに横に振る。

 好き好んで魔王様のお怒りに触れて、頭を冷やされたくないし……

「え……と、貴女は本物の高町なのはさんなんでしょうか?」

『何を以て“本物”とするのか、判断に困るんだけど……少なくとも、生まれて両親から付けて貰った名前は“なのは”だよ?』

 どうやら本物らしい。

「俺は死んだ筈なんだが、どうしてアニメのキャラと対面を? もしかして、今際の際に視ている幻影? なら、せめてヴィヴィオだったら良かったのに」

『ヴィヴィオじゃなくて悪かったね? 優斗君さ……少し頭、冷やそうか?』

 そう言って、指先に桜色の魔力を集中するなのは。

「あ、頭は十分に冷えましたからっ! 生意気言ってゴメンなさい!」

 優斗はソッコーで謝る。ヘタレと呼ぶ無かれ、魔王に逆らっては生きていけないのは実証されているではないか、彼のツンデレ自称凡人ガンナーで。

「まったく、次は無いよ」

「イエス、サー!」

 なのはの言葉に、優斗は金髪の死神……元い、女神のデバイスの如く返事をしたのである。


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